2012年1月12日星期四

せいりょくざい 父と息子の屍

アンドレアスは、 わたしを奪ったと一方的に思い込んで、 アキオを殺しに来たのだろうが
、 今現在、 わたしがもっとも必要とするのはアキオであって、 アンドレアスではなかったの
だから、 自分自身の生活にかかわってくることだ、 と咄嗟に判断できたから、 あの場合、 vp-rx(ビリリティピルズ) 2代目
き金を引くしかほかに現状から脱出する方法はなかったのだ。たとえ殺したいという意思が
なくても、 殺さなくては解決できないことなのだと光の速度よりも速く決定を下したのだ。
過去に何度も、 深慮熟考などしておれない緊急事態に出くわして、 即決に判断し、 危機を免
れてきたのだから、 とマルタは思っていたから、 してしまったことに拘ることがなかった。
「汗を掻かせて、 ありんこ 精力剤 気の毒したわねえ。レモン水つくったわ」
アキオがシャワーを浴びて、 炊事場にゆくと、 マルタは、 ほんとうにあんな惨劇があった
あとのようではなく、 早いわねえ、 と医師がジョギングしながら前の道を通りかかったのへ
挨拶したあとのような、 日常的な顔をしていた。
マルタの、 その折々にアキオが求めていることが以心伝心でわかるように、 コーヒーを飲
みたいと思ったときにはコーヒーを淹れ、 紅茶がいいなあと思っているときには、 紅茶にレ
モン汁を垂らし、 こうしていまは、 レモン水を飲みたいと思っていなくても、 喉の渇きを覚
えているときに最適な、 レモン水をつくって待っている的確な行動に、 アキオは、 ありんこ 薬 彼女の人
生のすべてを肯定しなければならないだろうと思わせられるのだった。
「あなたが、 はじめに穴を掘ろうとしたあそこに、 せいりょくざい 父と息子の屍体を埋めてあるの」
アキオが、 ぎくっとするようなことを、 マルタは、 風に向かって話すかのように、 淡々と
言った。
「父は、 彼自身が穴を掘って、 そこに横たわり、 拳銃の引き金を引いたのよ」
マルタが創作した詩的な父の自殺を語っても、 アキオはそれを疑う術などない。
夫が長いたびに出て、 もう永遠に戻ってこないような気がするの、 と言っても、 アキオは
それを詩的に思うだけだった。
まだ蒼白な顔色だったが、 マルタの灰緑色の虹彩が、 気体の塊に似た揺れ方をして、 焦点
の定まらない、 そしてそれを助長するためにか、 躰全体の輪郭をぼやけさせているのが、 犬
を射殺し、 つづいて医師を射殺しなければならなかった状況のあとの立ち姿として、 最も適
したかたちになっているのを、 アキオは観て、 マルタがどんなときでも自然に創る美意識の
具体化に感心させられる。
すでに熟しきっている女の、 もうすぐくるであろう老いの悲哀を感じさせないのは、 彼女
の精神だけではなく、 酷使してきたのではないのか、 とアキオがマルタの話から想像する肉
体も、 衰えていなかったし、 爛れてもいなかった。肌の艶はなかったけれど、 膚の弾力は充
分残っていたし、 子を一人産んでいるにしては、 腹に醜い襞もなく、 見事に豊かな乳房が、
子を産んだことを否定するかたちに乳首を反り返らせているのが、 肉体と精神の若さの象徴
だ、 と想わせた。
そんなマルタが、 アキオは精神的な苦難を潜ってきたのに、 精力に支障がなくて、 いつも
男性そのものは挑戦的なのね、 と笑ったのだ。
「わたしは神を信じないけれど、 こういう出会いの偶然性は信じるのよ。アキオとわたしは
、 この人生の曲がり角で出会わなければならないようになっていたんだって」
抱き合った肉体の、 どうしようもない違和感を認めたくないマルタがそう言うと、 アキオ
もまた出会いの不思議さを、 想わずには居られなかった。
マルタの上に乗ると、 まるで分厚い真綿がアキオの全身を包み込んで、 その重量を真綿が
内包している空気のなかに拡散するからだろう、 ゆっくり沈んでゆく。躰の中心に脊髄が通
っているのかと考えさせるほどの柔軟な肉体。
過去に抱いてきた日本の女たちとの肉体とは、 まったく異質なガイジンの女が、 日本人の
男と、 出会うべくして出会ったのだ、 という言葉が、 こじつけに聴こえないのが不思議だっ
た。

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