そして、 いよいよ出てゆく時が迫っていると切実に思った。
たしかにマルタは、 アキオを本気に愛し始めていたのだが、 それはまだ制御できる程度の
ものだった。未練を残しながらでも別れられるだろう、 と思えるくらいの。
アキオをこのまま出て行かせてはならないと考えるもうひとつの理由のほうは、 そんな曖
昧なものではなかった。わたしの秘密をあまりにも知りすぎてしまった男を、 出て行かせて
はならないと、 オカモト 003 人気 どろっ、 と濁った思いのほうが強硬に抗議していたのだ。
ふたつの思いが別々にあって、 決して共同戦線を張れるようなものではなかったが、 アキ
オを放せないという目的意識は同じだった。
マルタの思いを誤解したのはアキオのほうで、 満ち足りた倦怠感に急速に萎えてゆくもの
と気持ちが同期的に冷えて、 快楽の裏に潜むさらに大きな白々しさは、 今のことでもあり、
この一年のことでもあり、 そして彼の人生を通じてのことでもあった。
長く持続する愉悦の余韻に酔っている女が、 別れに拘るのを煩わしく思いこそすれ、 アキ
オにとっては未練の残ることではない。
人間の裏側を嫌悪するほど観てきたマルタが、 この関係に未練を持っているとは思えなか
ったアキオは、 マルタが心の裏側で考えている別の理由まで届くような、 深い考慮ができな
かった。
レモンをたっぷり滴らした熱い紅茶を飲めば、 朦朧としている頭も元に戻って、 互いの思 オカモト コンドーム 003
惟まで思考が届くと惟うから、 とマルタが豊かな乳房と腰を振り起こしてガウンを纏うのを
視て、 アキオはこの女には未練を残す価値があるなあ、 と自嘲しながら思い直す。
熱い紅茶を、 唇を震わせながら啜るアキオに、 マルタはすぐ実行に移さなければならない
ことを話して聴かせる。
父が死んでしまっていることを確認していないユダヤ人の探索は止むことがなく、 父の姿 オカモト コンドーム 激安 価格 003
の現われるのを待って、 いまでもこの辺りをうろついているのが、 腹立たしくて我慢できな
くなってきたこと。
この広い敷地と家の管理が煩わしくなってきたので、 これを売り払ってイタジャイーにワ
ン・ルームの小さなアパートメントを買って移転しようと考えていること。
この二つのことは、 一つにして考えられているのだ、 と聴いていたアキオは惟う。
そのアパートメントで、 アキオと暮せたらどんなにいいかと考えているんだけど、 とマル
タが言ったとき、 アキオは、 いままでマルタの乳房のあいだに埋めていた快さの残滓から、
硬い想念を鋭く立てて、
「ぼくは旅人だから」
と冷たく言ったのだった。
そのアキオの冷めた感情に、 マルタのぬくぬくとしていた気持ちも冷えた。
互いのあいだに、 互いの寒々とした吐息が流れた。
「好きなんや、 そやけど、 ぼくはいままで歩いてきた道を引き返したことがないんや」
アキオが、 好き、 と言ったことばに嘘はなかっただろう。歩いてきた道を引き返したこと
がなかったということにも。
それはマルタにも理解できたが、 彼女が心から愛した男がアキオだけだったという思いの
勁さを砕く理由にはならなかった。
この男を行かせてはならない、 といういくつもの理由がひとつになって、 マルタはアキオ
を旅立たせないと、 朝が明けるまでに燃やした執念を固めていたのだ。
「この家を売るについて、 いちばん困っているのは、 父の遺骸なんだけど」
父をどうするかという課題は、 父が生きているうちから考えてきたことだった。
どんなに罪深いことをしてきた父であっても、 ユダヤ人に唾をかけられることだけはさせ
たくなかった。父の屈辱を考えてのことではなく、 マルタ自身の矜持が、 それを恕さなかっ
たのだ。
「ユダヤ人は、 ナチスの墓なら、 掘り起こしてでも唾棄するのよ」
「ああ、 テレビで観たよ。メンゲレの墓が掘り返されたときの光景を」
「この家を売るのに差し障りがあるのは父の骨なの」
心急かれているのが、 まざまざと見えるほど、 マルタは一息に言う。
「ああ、 それやったら、 海に沈めたらええ」
あっ、 とマルタは息を呑んだ。長いあいだ考えてきたことに対して、 アキオがあまりにも オフロキサシン
簡単に答えを出したから。
海の傍に居ながら、 どうして海に沈めることを思いつかなかったのだろう。海が人間の墓
場だという通念がなかったからだろうか。
「海を墓場に、 ねえ」
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