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2012年1月11日星期三

精力剤 「お父ちゃ

そこにチヨが、
「柳ちゃ」
と声を掛けたのだ。
「どうしたのよ、 なにがあったの」
柳子は、 ざわざわ胸騒ぎがして、 ベッドから滑り降りる。
「さあ、 なにがあったのか知らんけど、 川田さんが来ておられるに」
あっ、 と柳子は息を呑んだ。なにも聴かないうちに、 鷹彦に異変が起こっているのだと気づいたのだ。
柳子が、 寝間着のまま戸口に走り出るから、 チヨが慌てて、 韓国終極[痩身]
「柳ちゃ、 それ、 着替えて」
と声を掛けたが、 柳子は振り向きもしないで、 男のように刈り上げた髪を、 両手の指で梳き揚げながら、 玄関に出て行き、
「おじさん、 鷹彦さんがどうかしたのぉ」
と戸口に立っている川田の姿を、 逆光のなかで黒い影として捉え、 韓国終極痩身 はっきり顔かたちのわからないうちから声を投げていた。
「はい、 死によりましたけん」
そこで、 はじめて川田が、 早朝から来訪した主要な用件を告げる。
柳子が、 あっ、 と立ち竦み。
チヨが眩暈を覚え。
龍一が持っていた本を床に落す。
そして、 その場に重苦しい空気が澱み、 しばらく無言の時間が流れた。
なんという男だろう、 ここに訪ねてきて、 まず口にしなければならないことを言わずに、 鷹彦が託けた本を柳子に渡すのが主目的のようにしていたとは。
龍一は、 川田の内気で無口なのにもほどがあろうと、 川田の鈍重さに腹立たしい思いをした。
「わたし、 行ってくる」
言うなり柳子は、 寝間着のまま飛び出しそうにする。
その袖を龍一が捉える。
「柳子、 もう亡くなられておられるんだよ。おまえが行って、 どうするというんだ。ああ、 鷹彦くんがおまえに本と封書を託けたから、 川田さんが持って来られたんだ」
言いながら龍一が床にしゃがんで、 落した本を拾い上げ、 柳子に差し出すと、 柳子は受け取ったが、 受け取ったまま、 じっと本の表題を読んでいるように、 表紙 を見詰たままだった。「絶望の逃走」という本は、 いぜん鷹彦がそれを読んでいるところに行って、 話したことがあったから知っていたが、 べつに読みたいと 言ったわけではなかったから、 この本を託けることに、 鷹彦の意思があったのだろうと考え、 それがどういう意味を持つものなのか知りたかった。
「遺書じゃないかな、 本に封書が挟まってるが」
龍一が、 注意を促す。
「お父ちゃ、 読んだの」
柳子が、 厳しい眼を上向ける。
「読んでいないよ。柳子、 読んでみなさい、 鷹彦くんの死んだ理由がわかるかも知れない」
「死んだ理由って、 おじさん、 鷹彦さんは自殺したんですか」
柳子の、 もう子どもではない厳しい口調に、 川田はうろたえる。
「いえ、 あのう、 べつに、 そんなふうには見えませんでしたけど」
あいまいな川田の言い方に、 柳子は苛立ち、 精力剤
「お父ちゃ、 勝手に自殺みたいに言うの失礼じゃないの」
と川田に対する腹立たしさを、 父のほうに向ける。
「儂は、 なにも、 そうは言っとらん」
「そんなニュアンスだったわよ」
そうだろう。龍一は、 理由もなくそう思って言ったのだから、 そう聴こえたのだろう。「いつなんですか、 亡くなられたのは」
このおじさんのことだから、 鷹彦さんが死んだのを気づくのも遅かったのだろう、 と柳子は厳しい口調で訊ねる。
「さあ、 いつなのか。今朝、 俺が起きたときにはもう死んどりましたけん」
どこまでも悠長な川田の返事だった。
「じゃあ、 この本託けられたのは」
川田の返事がもどかしく、 畳み込むように問いかける。
「ああ、 それは、 鷹彦の枕元に置いてあって、 あなたに渡してくれるようにと書いた紙が、 滋養 あったものですけん」
川田がそう言ったから、 柳子も、 鷹彦の死は覚悟の上だったのだろう、 と思った。
「鷹彦さんの手紙を読んでみたらいいに」
チヨが、 柳子の後ろから、 耳元に囁く。
「いやよ」
柳子は、 母のほうに振り返りもしないで、 言う。
「いま読みたくない。あとで読むから」
柳子自身も、 どんなことが書いてあるのか早く知りたくて、 うずうずしながら、 書かれてある内容を剥き出しにして、 みんなにわかってしまうのを懼れた。

2011年12月7日星期三

韓国終極痩身 「うそうそ

田所圭介が謙遜する。
「田所さんは几帳面な字を書くから、 ガリ版切るために産まれてきたみたい」
田所の隣に座っている色白の女性が、 労わるように言う。田所に向けた瞳の色と、 その言い方で、 女性の田所に寄せる情感がありありと伝わってくる。
「わたしは林典子です」
その女性が自己紹介する。痩せている田所とは対象的に大柄な、 もうおばさんというような肉付きで、 態度も落ち着いている。
「熊本出身で五歳のときにきました。なんにもできませんから、 編集会議の雑用係しているだけです」
林典子は、 内藤柳子が東京出身らしい切れのいい標準語を使うから、 それに対抗しようと非常に無理して標準語で話そうとしているのがわかった。どうしても消してしまえない熊本訛りを引きずりながら。
「林さんも読書家だから、 よく漢字を知っておられて、 田所さんといっしょに校正もしてもらっていますし、 韓国終極[痩身] 割り付けとか実際の編集作業を手伝ってもらっているんですよ」
ここでも鈴木が補足する。
「それだけじゃないだろう。恋愛小説書くんだろう」
佐藤がにやにやしながら、 さらに付け加えると、 韓国終極痩身
「うそうそ、 そんなこと嘘たいね。恋愛小説なんば書かんけん」
典子は、 あわてて否定するために、 標準語を使うのを忘れてしまう。
「わたし、 精力剤 日本から新しい本を持ってきていますから、 お貸ししますよ」
柳子が林典子のほうに向かって言うと、 ぱっと顔色が明るんだのは、 典子一人ではなかった。
ほう、 と青年たちの口からも歎声が漏れた。
「ぼくにも貸してもらえますか」
大野が四角い顏の面積を、 さらにひろげて言う。
「もちろんです」
大野の、 ぼそっとした感じに、 柳子は、 滋養 人間味の豊かさを感じて、 ほほ笑みながら応える。
「ぼくが図書係になって、 本の行方をはっきりさせますから、 回覧図書にしてもらえませんか」
鈴木も、 眸をきらきらさせて言った。
「でも、 青年会にとっていい本か悪い本かの責任は持ちませんから」
柳子が、 鷹彦が心配して言ったことを引き継ぐように言う。
死んだ鷹彦が、 柳子のところに残していった本もたくさんあった。鷹彦の叔父に返しに行くと、 「儂らには用のない本じゃけん、 形見としてもらってやってください」と言ったから、 借りていた川端康成や谷崎潤一郎の本も、 柳子の所有になっていたのだ。
「どういう意味ですか」
鈴木が問う。
「時代柄、 軟弱だって言われるようなものもありますから」
柳子は、 父が苦々しく言った言葉を思い出して、 まじめな顏になって言う。
「いや、 それこそぼくが読みたい本じゃないかなあ、 誰が書いた本ですか」
大野が、 ご馳走が目の前にあるような口振りで言う。