2011年11月22日星期二

性交痛塗り薬 はじめて降る雨らしい雨だった

「雨や、 お父ちゃん。雨降ってるで」
隣から春雄の弾んだ声が、 よろこびを如実に顕わにして聴こえてくる。
柳子自身は、 なんの物音で目醒めたのかわからなくて、 まだぼんやりしている頭のなかで考えているときにそれを聴いたから、 夢のなかでどこかの水道の蛇口から水が洩れている音を延々と聴いていたのは、 雨の音だったのかと気づいて、 こんな水道もないところで、 どうして蛇口から水が洩れている音を眠っているなかで感覚していたのだろうか、 とおかしくなる。
春雄の声は弾んではいても、 乾燥している木の葉のようではなく、 水を含んだゴム鞠が跳ねてくるように聴こえた。
まだ外は昏い。朝の気配が部屋のなかに浸透してきていなかった。しかし、 それは陽が昇っていないから昏いのか、 厚い黒雲にどっぷりと覆われているから昏いのかはわからない。
何ん時ごろだろう。柳子は手探りで枕元の腕時計をまさぐって、 手に触れたとたんに時計が床に落ちてしまって、 舌打ちをする。
「どれどれ」
隣で小森のおじさんが言って、 女性精力剤 勝手口のほうに出てゆく様子が、 暗がりのなかで感覚できる。
床に落とした時計はそのままにして、 柳子はベッドから起きてゆこうかどうしようか、 と思案している。
炊事場で母がもう、 味噌汁を作っている匂いが、 こちらまで流れてくる。
「こら本格的な雨やがな」
感慨深げな茂の声は、 まだベッドの上でぐずぐずしている柳子を引っ張り起こす力があった。
柳子ひとりではなく、 隣の家族全員もそうらしく、 がたがたと騒がしく起きて勝手口のほうに行く物音がつづいた。
みんなが雨に感激する心境は、 柳子自身がそうだから、 よく納得できる。
ブラジルにきてから、 性交痛塗り薬 はじめて降る雨らしい雨だった。毎日毎日、 陽照りがつづいて、 「炎熱地獄てこのことだすな」と、 ダイエット 茂がなんどか眩暈を起こしてぶっ倒れそうになったと言うほどだったのだから、 感慨一入なのはとうぜんだった。
「去年から今年にかけて長い旱魃だった」と、 通訳の熊野が入植したころに言っていたから、 よほど酷い炎天つづきにちがいなかった。
まだベッドでくずくずしている柳子には見えなかったが、 大地も久しぶりの雨をごくごくと呑み込んでいることだろう、 と童話的に想像する。
ああ、 やれやれ。これで罅割れそうだった皮膚も救われるだろう。かさかさになっていた唇にも艶が戻るだろう。なにはおいても、 酷暑のなかでの農作業をしなくてよくなったということだけで、 生き返った気分になる。
だけど、 おかしいなあ、 ブラジルの雨季には、 夕方ざっと降って、 さっと上がるスコールがきて、 「あと、 すうっとするけ」と熊野も言っていたのだけれど。
そういえば、 遠い風景として、 そんな光景を眺めていたのに、 どうしてここだけは、 朝からびしょびしょ、 日本の長雨のような降り方をするのだろう。
「お父ちゃん、 これやったら仕事休みになるのんちゃうか」
春雄の浮き浮きした様子が、 見えるような声だった。あっ、 そうだ。と柳子もそれを思って急いで寝室を飛び出す。
「まあ、 柳ちゃ、 どうしたんな」
チヨがびっくりするほどの勢いだった。
「お母ちゃ、 仕事休みになるってぇ」
「さあ、 どうずらかね」
「でも朝から雨降ってるのよ、 仕事できないんじゃないぃ」
「さあ、 どうずらね」
「なによ、 お母ちゃ、 さあどうずらねばかり言って、 どうなのよぉ」
「そんなこと、 あたしにゃわからなんに」
反応の鈍い母を相手にしているよりは、 まず自分自身の眼で確かめなければと思って、 ダイエット 柳子は勝手口から、 まだ昏い外を透かし見る。
しかし、 今日はコーヒー畑の黒々と盛り上がった影も見えないほど、 べったりとした暗さだった。
たとえ畑が見えたところで、 仕事があるのかないのかなど、 わかろうはずはなかったのだけれど。
チヨが雨のなかを、 井戸端まで水を汲みに行く。
雨が降りだしたのを知っているのか、 龍一は起きてこない。
とにかく朝から、 ぼとぼと、 歇みそうにもない雨が降っているのだから、 おそらく仕事は休みになるだろう、 と柳子は勝手に決めて、 そう決めたとたんに躰が鈍るのではなく、 しゃんとしてきて、 目蓋がはっきりと眠りから醒めたからふしぎだった。
いま雨が降るということは、 絶対的に言って、 無条件に恵みの雨なのだ。そう称賛してあげていい。おお、 雨よ。母なる雨よ。柳子の感性は、 いつも物語り的であり、 芝居がかった表現で思考する。
こんなうれしいことが、 またとあろうか。ひとりでに躰が浮き上がるほどだった。
暗がりのなかを、 大きなバケツを提げて、 小さいチヨがびっしょり濡れて戻ってくる。
「お母ちゃ、 ずいぶん手間取ってたじゃないの」
「ぬくといもんな、 この雨。お湯が降ってるみたいだに」
チヨが、 変に感激したような顔をしている。
亜熱帯の雨だからぬくといというわけではないだろうと思うけれど、 いつも早朝には、 夜のうちに気温が下がっていて、 空気がひんやりしているのだから、 雨が温いというのは特殊な現象に思われる。
そういえば、 いつもの朝とちがって、 今朝は空気も生暖かいようだった。
「そうぉ、 じゃあわたしも井戸端で顏洗ってこよう」
「水汲んできたに」
「ぬくとい雨のなかで、 歯を磨きたいのよ」
「おかしな子だな」
「お母ちゃだって、 温い雨浴びてきたんじゃないのぉ」
「わたしは、 仕方なくしたのさよ」
「じゃあ、 わたしも仕方なく、 雨の下で歯を磨くことにするわ」
母が言うことのどこまでが真実か、 確かめたいと思う。生温い雨が気持ちのいいはずはないと思ったのだけれど、 雨に打たれてみるとほんとうに、 なんとなく、 うっとりするような快い感触だった。雨は冷たいものという先入観念があったから、 よけいにそれを感覚するのだろうか。
柳子は、 ひたすら暗くて見えない空を仰いで歩く。そして、 まともに顏を叩く雨粒の大きなのにおどろく。
日本で、 こんなに大きな雨粒を見たことはなかった。ぼたぼたと牡丹雪のような大きさに思える。しかし、 雪とはぜんぜんちがう痛いほどの衝撃だった。

没有评论:

发表评论