2011年11月30日星期三

西班牙金蒼蝿催情液 「ああ

く雄牛があった。
やがて、 長い竹棹を持った男が、 その棹の先で先頭の牛の背を突くと、
指示された牛から順番に、 先のほうに従って狭まってゆくように造られ
た、 追い込み柵に入ってゆき、 一頭づつ遮断され、 前後左右に身動きで
きない枠のなかで足踏みしながら、 首の付け根のあたりに、 ぶすっと太
い注射針をぶち込まれて、 ぎょろっ、 西域腎寶 と白眼を剥き、 大きな注射器にた
っぷり入った薬液を注入され、 前の遮断柵が上げられると、 いかにもほ
っと安心したような表情に返って、 出てゆく。
牛って、 ほんとうに善良な動物なんだなあ、 と柳子は思う。
そして、 つぎの牛が枠のなかに入れられて予防注射され、 目玉を剥いた
あと、 安心して送り出され、 またつぎの牛が入れられて、 注射され、 と サイイキジンホウ
いう繰り返しだけだったから、
いくら物好きな柳子でも、 作業の単純さには飽きてくる。
もっとおもしろいものかと期待してきたのだが、 これ以上の変化はなさ
そうだと惟って、
「集められた牛全部に注射するの、 たいへんだわねえ」
とアドルフに言うと、 西班牙金蒼蝿催情液
「ああ、 Gold fly リューコが最後になると、 待ち疲れるだろうから、 先にリュー
コの尻に一本注射しておこうか」
と笑いながら言う。
傍に居た牧夫頭や牧夫たちが、 わっ、 といっせいに笑声を上げる。
「おう、 ノー、 御免蒙ります」
大袈裟に肩をすぼめて、 柵から飛び降り、 柳子が逃げ出すのを、 ほんと
うに惧れを抱いてのことだと惟って、 男たちの笑い声が一段と高くなっ
た。
柳子は、 帰る機会ができたので、
「じゃあ、 また」
と意味のない挨拶をして、 退散するつもりだったが、
「リューコ、 ちょっと待ちなよ」
とアドルフが呼び止め、 牧夫頭にあとを頼んで、 柳子と肩を並べる。
並べるといっても、 横に並んで歩くという意味であって、 大きなアドル
フと小さな柳子の肩が、 並べられるはずはない。
「ついでに、 肉を持って帰りなよ」
アドルフが肉に託けて、 母を悦ばしたい気持ちが、 ひしひしとわかる。
以前からアドルフが、 母に非常な好意を寄せているのを、 柳子は勘づい
ていたのだ。
もちろんそれは、 アドルフがほんとうに敬虔なクリスチャンで、 雑じり
気のない隣人愛を持っているらしかったから、 彼の邪な感情からではな
く、 純粋に母に対する人間的な慈しみだろうと解釈していたのだが。
アドルフが誘うままに、 彼の家のなかに入ると、 アドルフの後妻のマリ
アが、
「コーヒー喫むね」
と言葉遣いは大雑把だが、 感情は細やかなのが、 素朴さのなかにもわか
る応対をして、 甘いばかりであまりおいしくはないコーヒーを、 淹れに
かかる。
おいしくなくても、 おいしいと言うのが、 礼儀だというのは、 日本も外
国も同じらしいから、 柳子は、 にこにこして待つ。
そこに、 のそっ、 と部屋からアントニオが出てきた。
「なんだ、 帰ってたのか」
アドルフが、 無愛想に言う。
「ああ」
アントニオは、 眠たそうな声で、 父に向かっては同じように無愛想に返
事して、
「おお、 リューコ、 久しぶりだな」
と手を出してきて、 柳子も仕方なく出した小さな手を、 ぎゅっ、 と力を
込めて握る。
「そんなに勁く握ったら、 わたしの細い指が砕けてしまうわよ」
柳子が抗議すると、 抗議されるのがうれしいように、
「おお、 ごめんごめん」
と口では謝っても、 柳子の背にまで腕を回して、 さらに力を込めて、

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