2011年11月29日星期二

マジックラブポーション(男女共用) 「主人の自慢

「ああ、 そう、 そういう人は別だけど、 俺は出稼ぎ根性には反対だね。移民は植民でなくちゃあいかんと思うとるんだ」
「するとアリアンサを創った永田稠という人と同じようなお考えで」
「そういえばあんたも長野県ということだけど、 どうしてアリアンサに入らずに隣のアラモに入ったの」
「アリアンサはクリスチャンの集団地だと聴きましたもので、 儂は西洋の宗教にはどうも馴染めませんから」
知らなかったというのが恥ずかしくて、 龍一は理由をこじつける。
「ああ、 そう、 そういうはっきりした考えを持ってるのなら仕方ないよね、 俺もああいうインテリぶったやつの大ぜいいるところは好かんのだ。長野県人の悪口を言うわけじゃないよ、 あんたといっしょで、 キリスト教ちゅうのが好かんのよ。それにあんた、 あそこは全部お膳立てが出来ていて、 開拓の苦労をしとらん人ばかりじゃろ、 厳しい状況になったときには耐えられなくて、 文句たらたら出てゆくものが多いんだ。結局永田の立派な御託宣が活かされておらんということだな」
山口は、 龍一がキリスト教者の集団地だから入らなかったという理由を聴いたからだろう、 邦字新聞が揶揄した記事を、 そのまま鵜呑みにしているようなことを言った。
龍一は、 ハーバルビビッドライズ みずからが出任せに言った理由が原因の、 山口の発言だったから、 反発もできずに受け入れるしかなかったが、 やはり長野県人の悪口を言われているのだ、 と思って気分はよくなかった。
すべてのことに公平でなければならない新聞人からして、 日本人の島国根性という心の狭量さを剥き出しにして、 人の手柄を認めたくない揶揄的な記事を書くのだから、 一般のものがそれを見習っても仕方がないだろう。
「岩尾さん、 小笠原さん、 宮本くん、 早く風
呂に入ってくださいよ」
女将が呼ばわる声が、 居間まで聴こえてきて、 無人のように静かだった旅館のなかが、 急に活気づくのが感じられた。
女将は部屋の戸ごとに声を掛けてきたのだろう、 呼ばわる声が途切れたところで、 居間に姿を見せ、 にこにこしながら、
「はい、 ハーバルビビッドライズ お待ちどうさま」
と盆に載せてきたビール瓶を二本、 龍一と主人のあいだに置き、 小魚を火に炙ったつまみを盛った小皿を、 龍一と主人それぞれの前に置く。
そして龍一に向かって、
「お湯の加減はどうでしたか」
と白々しく訊ねる。
ああ、 と龍一は瞬間まごついたが、 すぐに体勢を立て直して、
「いやあ、 いいお湯でした。日本に帰ってきたような気分になって、 つい長湯をしてしまいました」
と見え透いた世辞を言う。もちろん宿の主人に聴かせるために。
女将は主人から見えない角度に躰の向きを変えて、 龍一に秋波を送る。
直接肉を交えなくても、 男の肌に触れながら心情を吐露したことで、 情を交わした気になっているような女の強かさに、 龍一は感心しながら、 女のほうがこういうことには度胸が据わって、 見境がなくなるから恐いのだ、 と女将の視線を外して、 龍一はそれには知らぬ振りをしたが、 気持ちは充分女将に届いていると思う確信はあった。
それは女将の声に反映していて、 マジックラブポーション(男女共用)
「主人の自慢の浴槽ですから」
と言う声の響きが、 弾んで聴こえた。
誰が岩尾で、 誰が小笠原なのか、 龍一にはわからなかったが、 一風呂浴びて居間に出てきたものが、 それとなく目礼するのに応えながら、 山口が前後の脈絡もなく話して聴かせる体験談に、 ほうとか、 ははあと相槌を打っているうちに、 女将と、 初老の日本人の賄い婦だろうとわかる女と、 若い黒人の娘が、 つぎつぎに味噌汁や煮魚やジャガイモの煮ころがしやら、 夕食の料理と飯櫃やらを運び出してきて、 マカ【MACA】まか たちまち居間が食堂に変わってしまう。

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