2011年12月5日星期一

サイイキジンホウ もっとも適っ

ほかの川田や竜野や中村たちには、 こんな感情が起こらないのに、 茂にだけは断ち難いものを感じるのがふしぎだったのだ。
かといって、 小森の家族を丸抱えするほどの経済的な力は自分にはないとわかっているから、 いっしょにここを出ましょうとは言えない。
「自作農になったからといって、 まだ海のものとも山のものともわかりませんから、 巧く行く保証はありませんが、 農業というものは巧く行かなくても、 何かを作ってさえいれば自分が飢え死にしない程度のものくらいは、 自分の土地ならできますからね」
「それだす、 そこが地主になる強みだす、 金威龍 わてもそのうちなんとか」
茂はそのとき、 ひょっとすると自分も、 二、 三年の出稼ぎではなく、 このブラジルの土地に這いつくばって生きるようになるのかもし
れない、 と理由もなく思った。
まだ一年住んだこの農園しか知らないのに、 いま龍一が言ったように、 大陸的な大らかさが自分自身の性格に適合しているように思うし、 イリュウ あまりにも忙しなく 走り回って、 結局独楽鼠のようにくるくる車を回しているだけの自転車操業だったのだから、 中小企業などは銀行を儲けさすためにある資本主義社会の一つの歯 車でしかなかったのだ、 とブラジルに来てはじめて気づいたのだから、 もうあんな生活はしとうない、 あとの人生は自然に躰を任せて、 ゆっくり歩いていきた い。もう大阪のゴミだめみたいなとこ走り回ってあくせくしているよりも、 土ほじくってなんとか食べていけたら、 そのほうがええかも知れへん、 と茂は思いは 西域腎寶 じめていたのだ。
そしてここを出てゆくときには、 タツを捨てていけたらもっとええねんけど、 子らとは別れられへんし、 というのが勝手なことのできない絆だったのだ。
「あほなこと考えんといておくれやすや、 わてはこんなとこに住む気ィなんか金輪際おまへんさかい、 土地なんか買うてもらわんかてよろしおまっせえ」
タツが、 冷たく突き放すように言う。
自分らにはできないことの口惜しさと、 嫉妬と、 そこから派生した嫌悪感なのが、 聴いているものには、 ありありとわかった。
茂はこっそり考えたことが視えよったか、 と少々は苦笑したけれど、 もう取り合う張り合いも持ち合わせなかった。
可哀相なお人、 とチヨは思った。チヨは、 誰にも言わなかったけれど、 龍一が自分たちの住む土地を探しに行くと言った時点で、 すでにブラジルに永住してもいいとまで考えていたのだ。
人間、 自分の土地を持ってそこに住み着くのが、 サイイキジンホウ もっとも適った生き方だと思っていたからだったし、 姑、 小姑のなかで肩を狭めて暮らすより、 夫以外に気を遣 わなくて済む環境のほうがいいのにきまっている、 と思うようになっていたのだが、 そんな身勝手なことを考えることを、 柳子のために赦せないジレンマにも捉 われていた。
そしてたった一人の娘のために、 みずからの考えを引込めなければならないのが母親として当然なのだから、 母親がみずからの体裁を構うために娘を犠牲にするような、 タツの自分本位な生き方が、 チヨにはいっそう理解できなかった。
タツのように、 土を捨て、 すっかり都会の汚れた空気に慣れてしまうと、 清涼な自然の空気には物足りなくなるのだろうか。
しかしいつか、 土に執着しなくなったものには、 自然からのしっぺ返しがくるのではないだろうかと思う。
龍一のところに嫁いできたのが、 そもそも父が小作人から自作農にしてもらえるという条件付きだったからなのだから、 土地への執着は計り知れないものがあった。

没有评论:

发表评论