「おもしろい子やねえ、 柳ちゃんは」
そう言いながら、 秋子は、 ほんまにウチも狐みたいなオナゴや。まじめな泰造はんを誑かして、 これから神妙な顔して、 主婦業勤める気ぃでおるんやさかい、 と思う。
そやけど、 避妊薬 媚薬女性用精力剤 これでもう身ぃ鬻いで生きんならんこと、 のうなったんやから、 思い切り泣いて過去と決別したらええねん、 性欲欠乏症 と秋子はしみじみ思った。
「柳ちゃんみたいに気ぃ勁いひとには、 理由もなく泣けてくるいうようなことあれへんかもしれへんけど、 ウチらみたいなオナゴには、 自分でもわからへん悲しさに襲われることあるのよね」
そんな秋子の言い方が、 すごく歳の差を思い知らされる感じで、 まだまだわたしは子どもなのかなあ。そういえば秋子さんはひとりでどんどん年取って、 おばさんみたいになってしまったなあ、 と思って寂しくなる。
「そんなものかなあ、 わたしは人間が表に現わす感情には、 すべて理由があると思うわ」
「そら理由はあるやろけど、 それが何なのかわからへんこともあるんよね」
秋子はそう言っているけれど、 ほんとうは泣く理由がわかっているのだ、 と柳子には思えた。
彼女自身が家族の犠牲になってきた秋子だったから、 こんどの泰造との結婚も、 そんな類のものではないのだろうか。好きでもない男と結婚しなければならなくなった運命というものが哀しくて泣いていたのに違いない、 と柳子は、 秋子が言いたがらない理由を、 独り合点にこじつけて納得する。
秋子が、 なんでも運命ということにして、 運命のままに流され、 諦められるのなら、 そのほうが運命に責任転嫁して、 気は楽かも知れないけれど、 柳子はそれを信じたくはなかった。どんな環境に居ても、 明日のことは己れ自身が切り開いていかなければ気がすまない、 わたしは運命なんぞに負けたくない、 としきりに思う。
「柳ちゃん、 おおきに。柳ちゃんが来てくれたさかい、 涙が止まったわ」
「そうぉ、 それならよかった。秋子さん、 ちょっと訊きたいんだけど」
「どんなこと」
「結婚について」
「なんやしら、 むつかしそうやねえ」
「むつかしい質問じゃないわ。秋子さん、 不感症 泰造さんと結婚できて嬉しいの、 哀しいの」
「そら、 うれしいわよ」
「ほんとうに」
「ほんとに」
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