少女のころから小さい嘘をよくついた柳子が、 前の嘘を埋め合わせるのにまた嘘を重ねるということをして
いたのを知っていたし、 その嘘の皮が破れて繕えなくなることがしばしばあったのだから。
なにもかも、 なんとか格好がついたようですね
龍一が惚けた顔で言うと、 西班牙金蒼蝿催情液
ええ、 お蔭さんで、 やっと目鼻がつきました
と安西が、 ほっとしたような顔になって応えたから、 龍一が勘違いして、
まだ目鼻はついておらんでしょう
と言ったから、 安西が、 はあ、 Gold fly と怪訝な表情になる。
チヨと柳子が顔を見合わせて、 チヨが、 くすっと笑い、 柳子が肩を窄めて、
目鼻がつくっていうのはぁ、 おめでたいことなのよねぇ。会社に目鼻がついてぇ、 わたしの胎の子にも目
鼻がついてぇ
と茶化すように言う。
龍一と浩一が同時に、 ええ、 という表情になって、 安西が照れ隠しに笑い、 龍一が大声で笑う。
もうこんなに大きくなっているのよぉ、 浩一さんは今まで忙しすぎて、 愛妻の胎が目立つほど大きくなっ
てきているのにも気づかなかったんだからぁ。この人は新聞のことしか頭にないんだものぉ、 生まれてくる
子もインキ臭いかもしれないわねぇ
と最後は陰気臭さにひっかけて嫌みになるような言い方をする。
そんな嫌味も、 いまの安西には通じなかった。
彼が顔を赤らめたのは、 柳子の胎の膨れ具合から察して、 まだサンパウロにいるときにすでに柳子を抱いた
事実を、 姑と舅の前で、 あからさまにされたことに対する羞恥心からだった。
若い柳子よりも、 もう初老と言っていい年齢の安西のほうが初心な感じに見え、 義父母と妻が、 口々にそう
言って笑ったのだが、 婿は笑えなかった。
いっしょに笑わない夫を視て、 彼には子に対する執着がそれほどなさそうだ、 と柳子は曲解した。
安西は、 柳子を抱く以前から、 彼女が処女ではないだろうと思っていて、 相手の男を川俣だろうと考えてい
たけれど、 内藤の家族と同居するようになってからも、 貞操を失ったの水 柳子が離れの部屋に忍んできていたから、 敬一との
関係を深く探索する気持ちを持ったことはなかったのだ。
龍一が、 安西と初対面のときにこいつが儂の長男ですと言ったし、 柳子も弟ですと言い、 傍にいた
敬一を兄ですと柳子が紹介したので、 一人娘だと聴いていたから不審に思ったのだが、 遠縁の従兄を養
子に迎えたのだということで、 柳子の夫にするためだったのだろう、 龍根増粗王 と何気なく思ったけれど、 柳子が家出
をしてきたというのだから、 それもおかしなことだと考え、 みずからの歪な想像を羞じて、 詮索するのを中
止したのだった。
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