中折れ そういうゆったりした家族もいて、 どちらかと言えば、 がさつなものの多い集団生活に、 潤いを与え、 とくに
花城清源の奏でる、 ゆったりした蛇皮線の音色が裏の雑木林にまで流れる様子は、 この集団生活のなかの、 どろ
どろした人間関係を、 外部にまで漏洩させるのを防ぐ役目をしていたから、 それを道すがらに聴くガイジンらは
、 桜組挺身隊を過激な集団だいう噂を信じなくなっていた。
花城清源の妻が、 よく透る声で歌う沖縄民謡の土俗的な節回しなどは、 かえってブラジルのインディオの歌っ
ている音調に似ていたから、 日本の素朴な民衆の集団だろうと言うものもいた。
広大なブラジル大地の片隅に寄り集まって、 百五十人以上だといっても、 ひとつまみでしかない日本人が何をし
ようとしているのか、 ガイジンたちにはわからなかったが、 すでに戦後十年にも喃々とする時期だから、 日本人
社会では、 これが戦後に発生した、 日本戦勝のデマ・ニュースに踊らされ、 いまだに大東亜建設の一翼を担おう
と、 ニューギニア島に再移住するべく領事館に日参して、 帰還船を出してくれ、 と騒いでいる愚かな一団だとい
うことは、 もう誰もが知っていた。
知っていても、 日本の敗戦を信じないものがまだ大ぜいいたから、 無銭帰国を策している乞食集団だと悪口
を言う声も表立ってではなく、 これが最後の勝ち組になるだろう、 と触らぬ神に祟りなしだと、 たいていのもの
は、 野次馬的興味はあっても、 なるべく距離を置き、 成り行きを眺めていた。
桜組挺身隊も、 厳しい規制を強いて、 托鉢に出かけるとき以外、 ペニス短小 隊員たちが個人的に外部と接触することを許
さず、 相互監視の体制を布いて、 隊員たちの動揺を未然に防いでいた。
桜組挺身隊の目的は、 はっきりしているのだからと、 隊員たちは、 その確信によって、 当初は希望に燃え、 精神
的な張りが、 雑音を寄せつけず、 辛苦に耐えていたが、 日々の生活はほとんど同じ日課の繰り返しで、 それに慣
れてくると、 藹々としてくる気分の吐け場がなかったから、 この団体も人間集団であることには変わりなく、 気
分が緩んで、 集団生活のなかで起こる種々の欲望は、 どうしようもなく持ち上がってくる。
羨望、 嫉妬、 反目、 自嘲と傲慢、 居直りと卑下、 図々しいものや気の弱いものなどと、 避けられない人間感情の
齟齬が生じて、 内部的な混乱は、 射精障害 避妊 常時集団催眠をかけっぱなしというわけにもいかず、 カリスマ性の勁い吉賀谷
たりとも統御することは難しかった。
いや、 吉賀谷自身が、 そういった人間生活のどろどろしたものを醸し出す元凶だったのだから、 その糜爛した
悪臭が漏れ出すのはどうしようもない。
隊員たちには、 質実剛健を説きながら、 幹部連中と、 その取り巻きだけは特別扱いをして、 互いの欲情と懶惰
を舐め合うことをしていたのだが、 それが隊員に洩れる心配はしていても絶対的な防御などできるはずはなかっ
たのだ。
隊員たちから出る不満は、 その場その場で巧みに誤魔化して切り抜けていたが、 人間生活の食と性という、 も
っとも基本的な問題を自分本位に考えていて、 隊員のほうの二大要求は緻密に計算されていなかったから、 見る
見る綻びが広がってきて、 修復できない状態になってきた。
なにしろ親の意向など理解できない子どももたくさんいて、 食べるものの質に文句は言わないが、 量について
は、 空腹のほうが黙っていないで、 ごろごろ腹が鳴りつづけると、 口からぶつぶつ不平が洩れるのは防ぎようが
なかった。
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