2011年12月12日星期一

チーター 柳子と結婚できることだから

「そう、 誓ってくれたぁ。じゃあ、 リドスプレー 頼むわねぇ。お父ちゃとお母ちゃふたりをぉ」
「やっぱり出てゆくのか」
ほかのことは太鼓判を捺した敬一だったが、 柳子が家出することには、 そう易々と頸を縦に振れないようだった。
柳子の敬一への不信感も、 あながち責められない独善性なのだ。
敬一が考えてしまうのはそんなことではなく、 柳子の先行きの不安よりも、 いま柳子のなかに入れているペニスを抜き難いような、 肉体的な別離が未練を持たせるのだけれど。
これが男と女の違いなんだ、 男尊女卑の社会的システムが厳然と存在しながら、 最後の最後には、 亭主関白よりも嬶天下のほうが強いのだ、 と理解していながら。
「うん、 もう決心したの。わたしは蚕のように永い眠りからいま目覚め、 脱皮するの。だからいよいよ蛹になる寸前に釜茹でされて、 一生を絹糸になって人のために尽くせないの。わたし自身のために、 どうしても変身を遂げ、 翔び立たなければならないのよ。お願いだから家出の援助をして欲しいのよぉ」
柳子が言っていることは、 敬一の言う徹底的な個人主義ではなく、 利己主義なのだが、 彼女自身はそれに気づいていないようだった。
敬一は辛かった。柳子がここから居なくなることに、 非常な寂しさや儚さや虚しさを覚えながら、 彼女の人生が発展的にレベルアップされないとは限らないのだから、 できるだけ援助したい気持ちはあったが、 柳子の決心を助けると、 養父母を裏切ることになり、 柳子がいなくなったあとの養父母の狂うほどの悲痛を見ながら、 俺は耐えられるだろうか、 とも惟う。
生涯旅人だ、 と嘯いていながら、 ここに定着してしまったあと、 どんどん自分自身の意志と気力を希薄にしてきた己の不甲斐なさを思って、 敬一は慙愧に堪えられなかった。
その原因が、 柳子の魅力に取り憑かれたせいだとわかっていたから、 辛いのだ。
魅力のある女を、 こんな農村の片隅で萎びさせていいのか、 いいはずはないではないかという結論が明白なのだから。
「今を外しては、 もう二度とこんなチャンスは来ないだろうし、 決心もつかないと惟うのよぉ」
それは柳子の言う通りだろう。年齢的に、 少女のときからの夢を現実化するために家出を決行する、 その時期はほとんど限界点にきているのだから。
柳子の新聞記者志向は、 折に触れて聴かされてきたし、 戦争が終ったこと、 邦字新聞の再刊、 ミモザの死、 何もかもが柳子の新しい出発を促す材料のように惟えるのは、 柳子だけではなく、 敬一も同じだった。
柳子を思慕しはじめていた気持ちは、 柳子が佐藤肇の子を産んだあと、
「敬一さんの望んでいることを、 わたしは受け入れるから、 わたしを抱いて。でも抱いたからといって、 わたしの望んでいることを壊さないでね。わたしはここで埋もれてしまうことはできないの。敬一さんが養子になってくれたから、 安心してサンパウロに出てゆける条件が揃ったっていうことなんだからぁ」
養子になるということは、 チーター 柳子と結婚できることだから、 と短絡的に考えていたことを裏切られたようなかたちになったけれど、 ハーバルビビッドライズ もしも肇が生きていたら、 柳子はとうぜん肇の妻になっていただろう、 彼の子を産んだという実績を問われて。
俺は最初から柳子とは結婚できないで、 兄妹になる運命にあったのだ、 と諦めることはできたのだが、 それは観念的なものと、 ハーバルビビッドライズ 公式的なものの違いであって、 私的な、 肉体的な関係を断ち切るのは辛かったのだ。
養父の気持ちも、 柳子と結婚して孫を産ませてくれと言っていたけれど、 柳子が肇の子を産んだ時点で、 すでに孫ができてしまうと、 こちらへの熱心な種馬願望が薄らいでいるのを知ったのだ。ということは、 養父自身が養子を裏切ったことにはならないのだろうか。いや、 そんなことは惟うのも不敬なことになるけれど、 柳子の家出を手助けする疚しさを軽減させる材料とはなり得るだろう。
養母の泣き叫ぶ声を聴くのは、 身を引き裂かれる思いがするだろうけれど、 これは耳を塞いでいるしかしようがない。
それらは我慢できることだけれど、 柳子ひとりがサンパウロ市に出ていって生活できるのだろうかと惟うと、 それが心配になって、 柳子を裏切って、 両親に娘の家出を報せ、 引き止めさせたくなるほどの誘惑を覚えた。
しかしそんなことをすれば、 いっそう柳子の家出を嗾ける結果になるのはわかっていた。意地っ張りなんだから。
「そんな無茶なことして、 躰を売って生活しなければならなくなったらどうするんだ」
敬一がそう言うのも、 止めろと言っても止めないだろうから、 できるだけマイナス状況を想定して、 脅し、 柳子の気持ちを臆病にさせるためだった。
「無茶なことは最初からわかってるわぁ、 でもこのままここに居たら、 気が狂いそうになるのよぉ」

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