――なんとも邪悪な気。
子供をがんじがらめにして、 心と体の自由を奪う。誰かが、 子供の健康をよからぬこととして、 強力な力を送り続けているのだ。
このような邪な祈りを、 ムテでは通常の祈りと区別して『呪い』と呼ぶ。
銀の結界をマリに纏わせる。
少しは防御にはなろう。しかし、 マリの命を危うくしてる呪いは強く、 もとを断たないことには解決にはならない。
そして、 今度はエリザだ。
開きっぱなしの目に涙を浮かべたまま、 勃起力減退 口を半分開けたまま、 まるで人形のように床に伏していた。
心に無理やり押し入って相手を追い出すような、 掛けられたほうには不快な暗示だ。相手の力が強く満ちている場合、 単純な方法は無理である。
サリサもかつては、 よくマサ・メルに掛けられていたものであり、 掛けられたほうの心地悪さは身をもって知っている。持続性はないものの、 この暗示は呪いにも似ている。
癒しの手段でもある祈りが、 使いようによっては毒である呪いになるというのは、 まさに紙の表と裏のような関係である。
サリサはエリザを抱き寄せると、 顔についた髪を払い、 子守唄を歌うかのように祈り言葉を唱え始めた。癒しの言葉がエリザを包み込んでは消えてゆく。
やがて、 ひくりとエリザが動いた。ある程度、 癒されたら暗示が解けるようにしておいたのだ。再び暴れそうになるのを、 サリサは抱きしめてやめさせた。
サリサ様、 ごめんなさい。私
興奮はしているが、 先ほどのような気が狂ったのでは?と思われる状況は脱したらしい。
いいのですよ。あなたは疲れています。まずは、 虚弱体質 ゆっくり休んで元気になってください。それから、 マリをお願いします
サリサの胸にしがみついてエリザは泣き出した。先ほどの涙とは別の涙だった。
ごめんなさい
謝ることなんて、 何もありませんから
サリサはエリザの髪を撫でながら、 さらに強き抱きしめた。
――謝ってなんかほしくはない。
涙とともに、 押し隠している苦しみのすべてを、 分け与えてくれたらいいのにと、 悲しく思う。
銀のムテ人にどれだけ癒しの力があろうとも、 人の心の傷を癒すのは魔力などではない。大きな力を持つだけに、 力だけでは癒しきれないものを、 サリサは知っている。
巫女姫の興奮が納まり、 どうにか眠りに着いたあと、 早漏 体力の衰え サリサはエリザと子供をフィニエルに任せた。
その場を収拾できたとはいえ、 根本的な解決はなされていない。
部屋に戻ると、 出たときのままと同じようにかしこまって待機していた仕え人たちが顔を上げた。
仕事熱心とはいえ、 今のサリサにはわずらわしい存在である。
しかし、 だからといって嫌な顔を見せて手の内を読まれてしまうほど、 サリサは愚かではない。微笑みすら浮かべて、 彼らの出迎えに応えた。
それで?原因は何なのでしょう?
医師が恐る恐る聞いてくる。
原因はたいしたことではありません。急激な回復がなされたので、 反動が現れただけです。巫女姫はまだ経験が浅いですから、 少し動揺して興奮してしまったのでしょう
では、 明日か明後日には?
おそらく、 直ると思います
サリサは、 さらりと言ってのけた。
そうでしょうか?やはり、 巫女姫の力が足りないのでは
そう言ったのは、 癒しの仕え人である。
力ではありません。足りないのは経験です
軽く、 しかしはっきりとサリサは断定した。
明日は、 休養最後の日である。
謁見の間から、 仕え人たちの姿が消えると、 サリサはほっとした。が、 無理に平静を装っていた顔は、 余計にけわしくなったに違いない。
晴れ渡った空と窓辺に揺れる木々のざわめき。しかし、 穏やかな霊山の日常は戻っていない。
巫女姫の姿を母屋の窓辺に見ないまま、 サリサはまた祈りの日々に戻らなければならない。
困ったことに、 あと一日
医師にああはいったものの、 明日マリが回復する可能性は極めて少ないだろう。
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