先生のご慧眼通り、 この子が夜泣きをして困るんですよ
すでにハナから聴いているから吉賀谷が知っているだろうことを、 柳子が、 彼の慧眼だと言いながら浩二を差し出すようにすると、 彼は両手で捧げ持つように浩二を受け取り、 横に寝かせ、 シャツの裾を開いて、 手を差し入れ、 腹を撫でる所作が手慣れていて、 たいていの場合初対面の男には、 人見知りをして泣く浩二が泣かないのだ。
子どもは動物的な勘で、 相手が危険な存在か安全かを感知するはずだから、 仏に抱かれたようにぬくぬくとした顔の浩二を視ただけでも、 吉賀谷の治療効果を信じてしまう。
この子の夜泣きは、 あなたの乳の出が悪いことから神経質になっているんですよ。それと少し腸が弱いようですね。濃い牛乳よりも薄めて与えるほうがいいでしょう
吉賀谷が、 浩二の腹に手を当てただけで、 即座に診断を下したから、 吉賀谷が医者ででもあるような錯覚を持ってしまう。
わたしに胸の膨らみがなく、 痩せた男のように扁平だから、 乳の出が悪くて、 牛乳を薄めて飲ませたらいいでしょう、 と言うところは誰でもが考えることだから、 別に敬服するようなことではなかったが、 彼が手を当てて軽く揉むようにすると、 浩二が快い寝息を立てて眠ってしまったので、 それが柳子に、 吉賀谷を心酔させる理由になったようだった。
吉賀谷が、 いつも自慢にするのは、 これなのだ。具体的に接触しさえすれば、 俺の眼と声と手によって、 人は心を傾けてくるのだ、 と。
お子さんは腸が弱いようですが、 あなたはすこし胃が弱いようですね
吉賀谷から内臓を透視しているかのように指摘されて、 柳子は、 すっかり心のなかに残っていた猜疑心を拭い取ってしまう。
これも遺伝なのか、 吉賀谷が指摘したように、 ノルフロキサシン 胃腸の悪い父の血を引いたのだろう、 わたしの胃が悪く、 浩二の腸が弱いというのは、 どうしようもない体質なのだから、 Norfloxacin と柳子は納得した。
吉賀谷が、 柳子と話しながら、 視線を柳子の瞳孔に差し込むようにして、 額に念力を集中し、 催眠効果を増幅させていることまで、 柳子は知る由もなかった。
なんだか急に眠気が襲ってきた感じを受けたのだが。
少し圧さえてみましょう
はあ、 どこをですか
胃の辺りを
あのう
いやそのままでよろしいですよ、 衣服の上からでも。わたしの掌、 そして指先から超自然的な光線が発して、 患部に注ぎ込まれますから、 すこし痺れるような感じはしますが、 それが徐々に障害を取り除いていきます
やわらかい吉賀谷の声を、 マーベロン 耳当たり良く聴いていると、 彼が座を立って後ろに回り、 柳子がやや背に警戒心を起こすのに構わず、 AILIDA 躰を接触してきて、 腕を前に回し、 衣服の上から胃の辺りに人差し指と中指を当て、 心持ち軽く力を加えると、 彼の指先から電波のようなちかちかするものが伝わってきて、 胃に刺激が加わってくるのがわかった。
柳子は、 気持ちがいい、 という言葉が口から出るのを危うく食い止める。それが淫靡な雰囲気になるように惟って。
浩二は、 柳子の膝を枕にして、 軽い寝息を立てはじめるし、 柳子自身も痺れるような睡魔に襲われはじめていた。
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