2011年12月4日星期日

紅蜘蛛液体 みずからが失敗しても

「どこで言うて、 ここだすがな。柳ちゃんとこの醤油と砂糖と味の素と、 ほいでちょっと隠し味使いましてんがな」
「あ、 それ。その隠し味っていうのを教えてよ」
「ううん、 柳ちゃんに隠しているわけにもいきまへんしなあ。まあ、 あとでこっそり柳ちゃんにだけ教えますけど、 秘密を守ってもらわなあきまへんでえ」
台所に転がっていたレモンとニンニクを、 それが感じられないほどに摺り込んだだけで隠すほどのこともなかったのだが、 秘密めいて言うことで、 舌の感覚をいっそう刺激するのを心得ているのだ。
チヨは、 姑から料理つくりを厳しく仕込まれてきたから、 BLACK WIDOW 茂がつくったタレがどういう味がするのかと、 箸にとって手の甲に乗せ、 そっと舐め、
「ほんとにこくがありますね」
と龍一には見せたことのない、 細やかな表情を茂のほうに傾ける。
それを目敏く捉えたタツが、 きりきりと脳天へ突き抜けるような嫉妬を感じたが、 表情を白くさせることで堪えた。
柳子が話し相手になると、 茂も元気が出るらしく、 酒のせいだけではない滑らかさが口に戻る。
ジョアキンのところで飼っている鶏の肉には、 脂身が充分についていることと、 旧移民の村上がつくっている白菜の葉肉が厚くて柔らかいから、 それらをどっさ り入れただけの、 山海の珍味というような高価な材料のない鍋のなかだったが、 二家族十一人が一つ鍋を囲んで箸を出すにぎやかさは、 ここに入植して二ヶ月後 の正月以来のことだったし、 娘が三人よって笑い興じる華やかさは、 鍋のなかの、 具の貧弱さを補って余りある。
そこにタツの甲高い声が加わると、 すこし品は落ちるけれど、 にぎやかさは倍増する。
小森夫婦の一時休戦状態かと思っていた夫婦喧嘩も、 一時的なものではなく、 すっかり和解してしまっているように、 言葉を間接的に交わすようになった。
「これは、 これは、 えらいご馳走さんだすなあ」
チヨのつくったレモン汁の二杯酢に、 煮えた野菜をつけて口にした茂が、 舌鼓を打ったあと、 もう赤くなってきている顔よりも、 さらに眼を赤くして言う。
「どないして、 こんなおいしい二杯酢つくれますねん」
タツも、 さきほど抑えた嫉妬を忘れたように、 感心して、 舌を鳴らす。
その舌を鳴らした音が大きすぎて、 柳子と話していた秋子のところまで届いたほどだった。
「お母ちゃん、 みっともないやんか」
秋子が、 タツの仕草を窘める。
タツが舌を鳴らすのは癖で、 味覚に舌鼓を打つだけではなく、 他人が気に食わないことを言っても鳴らすし、 黒寡婦 へまをしても鳴らすし、 紅蜘蛛液体 みずからが失敗しても鳴らすのだ。
いまも秋子から、 舌を鳴らしたことを窘められて、 舌を鳴らした。
タツは、 舌を鳴らすのが感情の表現だと思っているようなところがあったのだ。アラブ民族がげっぷをすることで、 紅蜘蛛粉劑 料理の美味を称賛するように
「いくら暑い国でも、 熱い鍋囲んでみんなで食べる旨さは、 日本人にしかわかりません。ガイジンはみな猫舌らしいですからなあ、 スープなども冷めてから出します」

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