チヨが気を揉む理由は、 安西との結婚話があって、 敬一が家を出て行ったあのときまで、 柳子が敬一の部
屋で寝ていたのを知っていたからだった。そして安西のところに忍んで行って寝ているのを知らなかったの
だから。
だから柳子が、 ロンドリーナにきてすぐ妊娠していることを告げたとき、 チヨは柳子の胎の子を(敬一の
子)だろうと思ったので、 安西浩一との夫婦関係が破綻することを懼れたのだ。
まるでそのことを立証するかのように、 柳子がここにきてから処女のままだなどと言うのだから、 チ
ヨの心配はさらに大きくなった。
それに反して龍一は、 なあに心配することはないさ、 とのんきに構えていた。
龍一は、 柳子が敬一と実質的な夫婦だったことも知らなかったし、 むしろ世間的詮索の卑猥な常識として、
編集長と秘書という位置関係を考えていたから、 安西とのあいだで、 すでに肉体的に夫婦関係が成立してい
たのではないだろうか、 だから安西が正式に結婚を申し込んできたのだろう、 と思っていたから、 金威龍 そのうち
柳子の胎が膨らんでくるだろう、 と思っていた龍一は、 柳子の妊娠をチヨから聴いて、 やっとふたりが正常
な夫婦になってくれたのだ、 と笑った。
それから間もなく、 浩一が、 龍一に向かって、
お義父さんの初孫が産まれます
と顔を染めて告げたから、 柳子からチヨに、 チヨから龍一にすでに聴いて知っていたけれど、 初めて知っ
たような顔をして、
ほう、 そうですか。いやいやそれはおめでたいことでした
と浩一の手を硬く握った。
傍にいたチヨも、 そこで安心できた。
安西は、 柳子と敬一との関係を疑ったことはあったが、 内藤の家に同居するようになってからも、 夜にこっ
そり柳子が忍んできて、 セックスしていたから、 まさか柳子が二人の男のあいだを掛け持ちしていたなどと イリュウ
は想像もできなかったのだ。
まだサンパウロ市で抱き合っているうちに妊娠していたんだなあ、 西域腎寶 と納得しただけで、 敬一との関係を疑う
ことなど、 想像することもなかった。
チヨは、 複雑な気持ちだった。彼女は嘘のない女だったし、 嘘をつくことを罪悪だと思ってきたから、 安西
が龍次をわたしらふたりのあいだにできた子だと信じているようだし、 柳子の胎の子を疑いもなく自分の子
だと信じているらしいから、 こんなに柳子の嘘がすんなりと受け入れらることに、 心が震えた。いつかはど サイイキジンホウ
こかから嘘が尻尾を出すのではないだろうか、 と。
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