2011年12月4日星期日

海馬補腎丸 さび言いますのんか

「姉ちゃんいうたら、 おいおい泣きはんねんよ」
三人が話しながら食堂にしてある居間に戻ってくると、
「何してはったんや、 みんな腹空かして待ってんのに」
とタツが眼を尖らせる。
「あんまり野火がきれかったさかい、 帰ってこられへんかったんやないの」
夏子が語尾で口を尖らせて言う。
「そんなもん観ててもお腹ふくれてきまへんで」
タツが花より団子を剥き出しにしたとたんに、
「お母ちゃんとは話でけへんで」
と春雄が言い、
「心のないお人やさかい」
と秋子が言い、
「詩情というものがわからないのよ」
と柳子がついて言うと、 チヨが目顔で制する。
タツは、 子どもらから総攻撃されても、 鼻で、 ふん、 とあしらって、 相手にしなかった。
チヨが急いで、 白い湯気の立つ飯を、 有田焼の朝顔茶碗についで、 極品狼一号
「さあ、 たくさん食べてください」
と言いながら全員に配る。
タツと決定的な喧嘩をするまでは、 ひとりで喋って座を持たせていた茂が、 もくもくと小皿に焼けた鶏肉の照り焼きを盛り分けて、 みんなに配る。
鍋を囲んで、 惠亭 わいわいとにぎやかな子どもたちの横で、 龍一がわざわざ伊部焼の徳利を持ち出して、 ピンガを詰め替えている。
ガラスの瓶に入っているピンガを、 コップに移して飲んでもいいところを、 事後緊急避妊薬 徳利と猪口を使って飲もうという算段らしく、 手間暇かけている龍一の手元を見ながら、 猪口を手にとって、
「ええ焼き物だすなあ」
と茂は焼き物のことに詳しいわけではなかったが、 こういう焼き物に凝っているものに掛ける挨拶だけは知っている。
「備前です」
龍一が、 猪口を持ち上げて、 観賞するように、 くるっ、 と回す。
「わては焼き物の味はわかれしまへんけど、 これは普通の瀬戸物と違う味がおますな。わび言うんですか、 海馬補腎丸 さび言いますのんか」
口を濁すと、 かえって知っていて謙遜しているように聴こえることも知っている。
「どちらも日本人にしかわからない美意識でしょう。備前には土の匂いがじかに伝わってくる古色な情緒がありますね。飾らないというのが茶道の神髄でしょう。まあ器ひとつだけでも日本らしい味が出ますよ」
龍一が言って、 茂が持っている猪口に、 ピンガを入れた徳利を差し出す。
備前の猪口に酌んでくれるのを、 茂はありがたそうに捧げて受ける。
「いやあ、 こんな高価な焼き物で飲んだら、 サトウキビの酒も黄金の酒の味しますさかいふしぎなもんだすなあ」
茂の感激は大袈裟だけれど、 とってつけたような嫌味はない。
「旧い伝統と文化のない、 ここらのガイジンなんぞに器が酒や料理の味を変えることなんぞわかりませんよ」
龍一は得意になって言う。虎の威を借る自慢でも、 日本民族の優秀性に酔うのは気持ちのいいものだった。
「おじさん、 このタレ、 ものすごくおいしい。どこで仕入れてきたのぉ」
柳子が、 鶏の照り焼きを一口噛んで、 舌なめずりする。

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